医者や科学者向けに開発された、ミルガウスRef.116400の黒文字盤を買取させていただきましたので機能や仕様をご紹介いたします
目次
MILGAUSS
1956年、機械式時計が主流の時代、医師や科学者は職務の性質上、磁気に接する機会が多いため時計への影響は避けられず、悩みの種となっていることにロレックスは着目し「ミルガウス」を創り上げました
「ミル」はフランス語で「1000」、「ガウス」は磁束密度の単位からなりロレックスに多い造語になります
初代Ref.6541はシルバー色の有名なイナズマ針と回転ベゼルを搭載したもので、今では1千万円をゆうに超える価格で取引される幻といえるほどのモデルですので、オリジナルを見かけることはほとんどありません
何故これほどまでに高額で取引されるかというと、当時は時計の性能が専門的すぎてあまり売れる事がなく、世に出回っている絶対数が限りなく少ない事と、プレミアがつくのは何十年も先な事が多いのが原因になっています
2代目になるとイナズマ針が変更されたたことと、やはりモデルそのものの需要が少なく、1988年には生産終了となったため、現実的にイナズマ針が使われたミルガウスを手に入れることはできなくなっていました
そんな中、2007年に登場したのが今回の買取品 Ref.116400
イナズマ針を搭載し、様々な改良が行われています
強磁性合金
磁気からムーブメントを守るために開発されたミルガウスは、時計内部に強磁性合金で作られた磁気シールドを配置することでムーブメントが保護されています
このシールドには「B」とその上に、向かって右方向の矢印が刻印されいて、これは磁束密度を表していますが内部の刻印のため通常は見ることはできません
そのシールドの内部にはキャリバー3131のムーブメントが収められ、常磁性合金で作られたブルーのゼンマイ「ブルーパラクロム・ヒゲゼンマイ」が装備されています
一定の伸縮が不可欠なゼンマイは、磁気や衝撃により狂いが生じるため、このヒゲゼンマイを用いることでそれらを克服することが可能になっています
機械式時計は、通常50~100ガウスほどの磁気を浴びてしまうとムーブメントに影響がでてしまうものですが、この仕様のため1,000ガウスもの磁気もシャットダウンしてしまいます
(市販されている磁石を密着させると、800ガウスほどになります)
なお、デイト表示は磁気が侵入する開口部を減らすために採用はされていません
重要な精度
磁気シールドにより磁気から守られるキャリバー3131は、安定した精度を誇る「高精度クロノメーター」として、常に正確な時刻を表示します
その精度は、日差-2秒~+2秒に収まるもので、これはスイス公認クロノメーター検査協会(COSC)の基準の2倍を超えるもので、数十年前の曖昧だった認定方法の渦中に差別化を図るために、公認クロノメーターを取る精神が受け継がれているものだと思われます
混合ルミネッセンス
針とインデックスには夜光が塗られていますが、Ref.116400は夜光の変更前後でも販売されていたため、旧塗料であるルミノバと新塗料のクロマライトが混在しています
ですので、夜光の種類は3種類となり
- 全てルミノバ(今回の買取品)
- ルミノバとクロマライトの組み合わせ
- 全てクロマライト
このように流通しているため、夜光が気になる方は、事前にチェックされることをお勧めします
二重構造
防水100mを実現するためには、リューズからの水の浸入を防ぐために、チューブ内側とリューズの内側にパッキンが使われることで、二重密閉構造となり、リューズをきっちりねじ込むことで高い防水性が確保されています
二重密閉構造はトゥインロックと呼ばれる他、ダイバーズ仕様のモデルはチューブの内側にもう一つパッキンを用いた三重密閉構造のものがあり、これはトリプルロックリューズと呼ばれます
容易に延長が可能
これまでのロレックスのモデルは、ダイバーズ系に装備されるフリップロックブレス以外では工具なしでは腕廻りの調整ができない仕様でしたが、新たに「イージーリンク」と呼ばれるエクステンション機能を使えば、容易に5mmの延長が可能になっています
このように「引き出す」と「収納する」だけで腕廻りを調整することができ、クラスプ内で行えるため外観に影響を与えることなく夏場と冬場で自分で変更できるため、さらに所有者の満足度が向上する改良が加えられています
1985年から採用
三代目ミルガウスの素材は「904Lスチール」と呼ばれる非常に堅牢で研磨性に富んだ金属で造られていて、鍛造方式で製造されています
プレスすることで隙間がなくなり強固に出来上がるのですが、その製造には多額のコストがかかるため、採用しているのは宇宙工学やハイテク産業などに限られているのが現状であり、時計に採用できるのは世界に販売網を持つロレックスならではといえます
そのため、定期的なメンテナンスを行えば代々受け継いでいける時計であるといえ、現に数十年前のアンティークロレックスがまだまだ流通していることを考えると、新しい技術と素材が埋め込まれたこのミルガウスは、さらなる時間を刻んでくれるのではないでしょうか
メーカー | ロレックス |
モデル | ミルガウス |
リファレンス | 116400 |
文字盤 | ブラック |
ケースサイズ | 40ミリ |
素材 | ステンレススチール |
防水 | 100m |
ムーブメント | キャリバー 3131 |
振動数 | 28,800 |
パワーリザーブ | 48時間 |
機能 | 耐磁 |
参考価格 |
革新的な技術
黒文字盤の他に同時期に発売された白文字盤の他に、ガラスが薄いグリーンで造られたRef.116400GVは発売直後に品切れし、プレミア価格で販売されていました
「革新的な技術」とはこの、グリーンサファイアガラスのことで、長年の研究の末たどり着いた技術であり、耐傷性・耐蝕性に優れていますが、製造には数週間の時間が必要な工程であるとの事
この技術は特許を取得していないのが意外な事実ですが、その理由は「非常に高度な技術のため、製造を試みる者がいない」と、公式に発表されています
生産終了
2007年から発売された、Ref.116400も2015年になると生産終了となり、残されたのはRef.116400GVと同仕様のブルーダイヤルが特徴的な「Zブルー」のみ継続されることになりました
比較的新しい年代に8年間生産されていた事を踏まえると、販売数も多くGV仕様は継続されたため、多少の値上がりは考えられるものの急激な価格の上昇の可能性は低いと思われますが、どうなるかが分からないのがロレックスです